データ分析レポート

2026.05.26

コラム

POSデータを活用した需要予測② ― 売上と景気(日経平均株価)の関係 ―

日本経済新聞社では、日本全国のスーパーや小売店、ドラッグストア、コンビニエンスストアなどから、独自にPOSデータを収集・蓄積しています。

せっかく大量の定量データがあるのであれば、もっと活用しない手はありません。そこで今回、日経の社員である著者自身も“身近なテーマでデータ分析をしてみよう”と考え、POSデータを題材にコラムを執筆することにしました。

まずこのシリーズでは、「POSデータを活用した需要予測」をテーマに、日経が保有するデータだからこそできる分析をご紹介します。

シリーズ第一弾では、「気温」と「売上」の関係について分析しました。続く第二弾では、気温とはまた異なる代表的な外部要因である「景気」を取り上げ、「景気」と「売上」の関係を定量的に深堀りしていきます。

なお、本コラムは分析の専門家向けではなく、データ分析の経験があまりない方にもイメージを掴んでいただけるよう、分析プロセスを一つひとつ丁寧に追いながら進めていきます。

1. 今回のテーマについて

前回のコラムでは、「気温」という季節要因と売上の関係について整理しました。冷たい飲み物や温かい食品のように、気温の影響を強く受ける商品がある一方で、その影響の大きさは商品分類ごとに大きく異なることを確認しました。

需要予測で用いられる外部要因は、気温だけではありません。もう一つの代表的な要因として、しばしば挙げられるのが「景気」です。景気は、消費者の購買意欲や支出行動全体に影響を与える要因として広く認識されています。

ただし、景気の影響がすべての商品に同じように表れるわけではありません。本コラムでは、景気指標として日経平均株価を取り上げ、商品分類ごとに売上と景気との結びつき方がどのように異なるのかを整理していきます。気温編と同様に、POSデータをもとに、景気という外部要因が売上にどの程度関係しているのかを定量的に確認していきます。

2. 使用データ

今回の分析では、主に以下2種類のデータを活用しています。

  • 売上データ:日経が保有するPOSデータの大分類別の「千人あたり金額」(月次)
    • 「千人あたり金額」は、千人の客が来店したときに、その商品がいくら売れたかを示します。地域・業態の規模や収録店舗数の変動に関係なく、商品の売れ行きを計ることができる指標です。
      • 算出式:対象店舗・期間での販売金額合計÷対象店舗・期間の来店客数合計×1,000
    • 今回の分析においては、商品単品等ではなく大分類(218分類)別に集計しています。
  • 景気データ:日経平均株価(月次)
    • 日経平均株価は、日本経済新聞社が算出・公表している日本を代表する株価指数で、東京証券取引所プライム市場に上場する225銘柄の株価をもとに算出されています。市場流動性や業種バランスを考慮して構成銘柄が選定されており、株式市場全体の動向や投資家の景況感を反映しやすい指標として広く利用されています。
    • 日経平均株価は、景気の変化や消費者マインドを比較的タイムリーに反映しやすい指標であり、今回は売上と景気の関係を「変化」という切り口から捉える目的に適した指標として採用しています。

  • 分析対象分類:日経POSの保有する全218の大分類
  • 分析対象期間:2021/2~2026/1(月次)
  • 分析対象店舗:全国約1,000店舗
    • 日本経済新聞社が独自に収集している全店舗から、商業統計と照らし合わせたうえで、地域バランスを考慮して集計対象店舗を選定しています。
  • 分析に活用した数表:
    • 地域×商品分類×年月をキーとして、千人あたり金額・平均気温をそれぞれ紐づけています。
      • 千人あたり金額は、地域×商品分類×年月別に数値が異なります。
      • 平均気温は、地域×年月別に数値が異なります。
    • 利用したデータのイメージ(例)

※ 表は左右にスクロール出来ます。

商品分類 年月 千人あたり
金額(月次)
日経平均株価
(月次)
001 豆腐・豆腐製品 2021/02 300円 21,143円
001 豆腐・豆腐製品 ・・・ ・・・ ・・・
001 豆腐・豆腐製品 2026/01 280円 53,323円
002 納豆 2021/02 50円 21,143円
・・・ ・・・ ・・・ ・・・
871 消耗家庭用品ギフトセット 2026/01 3円 53,323円

3. 分析におけるポイント

第一弾の分析でも確認したとおり、多くの商品の売上には、気温による強い季節変動が含まれています。特に月次データで見る場合、この季節変動が売上全体の動きを大きく左右するケースも少なくありません。
そのため、売上と景気の関係を捉えようとすると、こうした季節要因の影響も受けやすい構造になります。景気とは別の要因によって売上が上下する状況を前提として、分析を行う必要があります。

4. 分析指標

程度を定量的に測るための指標として、今回の分析では「相関係数」という指標を採用しました。

    • 相関係数は、ー1~1の値をとり、2つの数値がどの程度一緒に増減するかを定量的に示す指標です。
      正の値は一方が増えるともう一方も増えやすい傾向があることを、負の値は一方が増えるともう一方が減りやすい傾向があることを表します。値の絶対値が大きいほど関係は強く、0に近いほど関係は弱いことを意味します。

ただし、前章で触れたとおり、多くの商品の売上には気温による強い季節変動が含まれています。このような季節変動を含んだまま水準同士で相関を取ると、売上が気温の上下に左右されることで、景気との関係が実際以上に弱く見えてしまう場合があります。全体としては景気とともに動いている商品であっても、季節要因による変動が重なり、相関が打ち消されてしまうことがあるためです。

  • イメージ(縦軸:金額 横軸:年月)
イメージ(縦軸:金額 横軸:年月)日経平均株価の上昇に伴って売上も全体的に右上がりなので、日経平均株価と売上の関係性は強そうに見える。ただ純粋な金額で相関を取ってしまうと、日経平均株価が上昇しているのに季節要因の影響に引っ張られ売上が落ちてしまう期間があるので、不本意に相関係数は小さくなってしまう。

そこで今回は、売上や景気そのものの値ではなく、「変化」に着目して分析を行います。具体的には、売上および日経平均株価について前年同月との差を取り、その前年差同士の相関係数を算出することで、季節要因の影響を抑えたうえで、景気の変化と売上の動きとの関係を確認していきます。

  • イメージ(縦軸:金額 横軸:年月) 
イメージ(縦軸:金額 横軸:年月)前年さを算出し、前年差同士の相関係数を算出することで、季節要因の影響を抑える

5. 分析結果(同月での売上と景気の相関)

ここでは、日経平均株価の前年差と売上の前年差の相関を用いて、「景気の変化が、その月の売上にどのように反映されているのか」を整理していきます。変化という視点から関係性を捉えることで、景気と売上の結びつき方をより明確に把握することを目的としています。
以下では、相関係数の大きさに応じて、商品分類を3つのカテゴリーに分け、それぞれの特徴を見ていきます。

5-1. 景気の変化と強く結びつくカテゴリー

まず、景気の変化と強く結びついているのが、日経平均株価の上昇とともに売上が伸びやすいカテゴリーです。相関係数が0.6を超える分類が上位に並び、景気の変化が消費行動に反映されやすい商品群であることが示されています。

上位には、香辛料、バター、和風調味料・ソース、ナチュラルチーズ、生クリームなど、必需品でありながら「食の質」や「嗜好性」に関わるカテゴリーが並びます。これらは、景況感が良い月ほど使用量が増えやすかったり、より付加価値の高い商品が選ばれやすいと考えられます。

また、牛乳やみそ、ゴマといった日常消費頻度の高い食品も含まれており、景気の良い局面では、まとめ買いや単価上昇といった形で売上に影響が出ている可能性があります。

加えて、清掃手入れ用品などの非食品カテゴリーも見られ、景気が良いときに「後回しにしていた、生活の質を高める消費」が動きやすい商品分類も含まれます。

■ 全218分類のうち相関係数が大きい15分類

大分類名 相関係数
香辛料 0.704
バター 0.703
和風調味料・ソース 0.684
ナチュラルチーズ 0.647
生クリーム 0.645
牛乳 0.628
みそ 0.623
ゴマ 0.607
水産加工品 0.591
ノリ 0.576
中国酒 0.575
チルド調味料 0.571
水産乾物 0.569
清掃手入れ用品 0.533
納豆 0.526
5-2. 景気の変化と逆方向に動くカテゴリー

次に、景気の変化と逆方向に動くカテゴリーを見ていきます。日経平均が下落する局面で、売上が相対的に伸びやすい分類がこのグループに該当します。

ただし、相関係数の大きさは極端に大きいわけではありません。今回確認された相関係数は、おおむね -0.3〜-0.5 程度に分布しており、「強い逆相関」というよりも、景気が悪化した局面でやや選ばれやすくなる傾向が、複数の分類で共通して見られる水準といえます。

上位には、総菜・弁当、調理パン、生タイプ即席麺、食品容器、各種詰め合わせ菓子などが並びます。これらはいずれも、外食や高価格帯商品を控えつつ、手軽に日常を回すための選択肢として位置づけられる商品です。景気が悪化する局面では、消費行動が一気に切り替わるというよりも、こうした分野への選び替えが緩やかに進んでいる様子がうかがえます。

また、水産瓶詰やつくだ煮、ちくわといった保存性が高く用途の広い食品も含まれており、家計防衛意識が高まる局面で「無駄になりにくい」商品が選ばれやすくなる傾向が表れています。このグループは、不況時に急増する商品群というよりも、景気悪化局面で無理なく選び替えられる日常消費の集合体として捉えるのが適切でしょう。

■ 全218分類のうち相関係数が小さい15分類

大分類名 相関係数
水産瓶詰 -0.497
各種詰め合わせ菓子 -0.471
調理パン -0.461
食品容器 -0.437
生タイプ即席袋めん -0.436
総菜・弁当 -0.411
食品ギフトセット・商品券 -0.375
ちくわ -0.339
駄菓子 -0.315
和菓子 -0.314
栄養サポートドリンク -0.301
テーブルパン -0.299
生タイプ即席カップめん -0.294
加熱用野菜 -0.293
食用油 -0.292
5-3. 景気の変化にあまり左右されないカテゴリー

最後に、景気の変化とほとんど連動していないカテゴリーを見ていきます。日経平均株価の前年差に対する相関係数がゼロ付近にある分類が、このグループに該当します。今回の分析では、相関係数の絶対値がおおむね0.03以下に収まる分類が確認されており、景気の良し悪しと売上の動きがほぼ独立している商品群といえます。

これらのカテゴリーに共通しているのは、売上が景況感よりも、生活インフラとしての必要性や日々の生活リズム、習慣的な消費によって支えられている点です。水や電池、穀類、ペットサニタリー用品などは、「景気が良いから買う」「景気が悪いから控える」といった判断の対象になりにくく、必要なタイミングで一定量が購入される性格を持っています。

また、女性用化粧品や健康茶飲料、麦茶、焼酎類といった商品も、嗜好やライフスタイルに強く根ざした消費であり、短期的な景気変動がそのまま売上の増減につながる構造ではありません。これらの分類では、相関係数がプラス・マイナスのどちらであっても、その水準が極めて小さい点が重要と言えます。

相関が小さいという結果は、「分析できなかった」ことを意味するものではありません。むしろ、景気という軸では説明する必要のない消費領域が明確に切り出された点に、今回の分析の価値があります。日常性や必需性、習慣性の高い商品ほど、景気変動とは一定の距離を保ちながら、安定した需要によって売上が形成されていることが、数値として確認できました。

■ 全218分類のうち相関係数の絶対値が小さい15分類

大分類名 相関係数
-0.002
水産練り製品・揚げ物 -0.005
マーガリン・ファットスプレッド -0.007
女性用基礎化粧品 0.008
女性用メーキャップ化粧品 -0.009
食用酢・酢関連調味料 -0.010
防虫剤 0.018
穀類 0.020
即席カップめん -0.021
電池 0.022
焼酎類 0.022
健康茶飲料 0.025
麦茶 0.027
ペットサニタリー用品 0.028
希釈飲料 -0.030

今回の分析結果の中で、特に興味深い点として挙げられるのが、同じ即席めんでありながら、使われ方の違いによって景気との距離感が分かれている点です。

即席カップめんは、相関係数が -0.02 程度と、水や電池などと同じく、景気とほとんど連動しないグループに位置づけられました。景気が良いから増える、悪いから減るといった動きは見られず、比較的安定した需要が維持されている様子がうかがえます。

一方で、生タイプ即席袋めんは、相関係数 -0.4 前後と、総菜・弁当や調理パンと同じ方向の動きを示しており、景気が悪化する局面で相対的に選ばれやすい傾向が確認されました。支出をやや抑えたいときの選択肢として、家計判断と結びつきやすい商品であることが読み取れます。

その中間に位置するのが、生タイプ即席カップめんです。生タイプ即席カップめんは相関係数-0.3ほどで、景気と切り離されているわけでも、即席袋めんほど明確な代替消費の位置にあるわけでもなく、景気が悪化した際に「選ばれることはあるが主役にはならない」という、やや曖昧なポジションにあります。

これらはいずれも安価で手軽な食品ですが、節約のために選ばれる商品なのか、生活リズムの中で習慣的に消費されている商品なのかという役割の違いが、景気との関係性の差として表れています。即席めんという一つのカテゴリーの中でも、使われる場面に目を向けることで、消費行動の違いがより立体的に浮かび上がることが分かります。

6. 分析結果(時間差を踏まえた売上と景気の相関)

景気の変化が消費に影響すると言っても、その影響がいつ売上に表れるのかは、商品によって大きく異なります。景況感が良くなったその月にすぐ売上が動く商品もあれば、しばらく様子を見てから動き出す商品、あるいは景気の良し悪しとはほとんど関係なく売れ続ける商品もあります。

そこで今回の分析では、日経平均株価(前年差)と売上(前年差)について、同じ月(0か月後)だけでなく、1か月後、2か月後、3か月後の売上との相関係数も算出しました。景気の変化が、どのタイミングで売上に反映されているのかを捉えるためです。

その結果、「景気の変化に対して、売上がいつ・どの方向に反応するのか」という観点から、商品分類は次の5つの反応タイプに整理できます。

① 即時・好況追随型 ― 景気改善に対して、即時に売上が伸びやすい商品 ―

このタイプは、景気が改善した月に、同じ月のうちに売上が伸びやすい商品群です。『#5-1 景気の変化と強く結びつくカテゴリー』とほぼ同じ分類が並んでおり、好況期の消費が即座に反映される商品群であることが、時間差の観点からも確認されました。

これらの商品の特徴は、景況感の変化に対する反応の速さにあります。景気が良くなったと感じたタイミングで、消費行動がすぐに変化し、その影響が同月の売上に表れています。

このグループは、好況期の消費動向を最も早く示す存在であり、景気の変化をいち早く映し出す指標的な役割を果たしていると言えるでしょう。

※ 表は左右にスクロール出来ます。

大分類名 景気×同月の売上 景気×1か月後の売上 景気×2か月後の売上 景気×3か月後の売上
香辛料 0.704 0.663 0.560 0.425
バター 0.703 0.605 0.425 0.225
和風調味料・ソース 0.684 0.667 0.520 0.351
ナチュラルチーズ 0.647 0.522 0.386 0.195
生クリーム 0.645 0.452 0.327 0.170
牛乳 0.628 0.605 0.530 0.446
みそ 0.623 0.553 0.369 0.215
ゴマ 0.607 0.395 0.233 0.230
水産加工品 0.591 0.513 0.468 0.358
中国酒 0.575 0.480 0.362 0.214

※景気×同月の売上の相関係数の大きい順に表示

② 遅行・好況追随型 ― 景気改善のあと、時間をかけて売上が伸びやすい商品 ―

このタイプは、景気が回復した直後ではなく、数か月程度の時間差を経て売上が伸びてくる商品群です。景況感の改善を受けて、段階的に消費行動が変化し、その結果として需要が顕在化する点が特徴です。

日用品や嗜好品を中心に、「あると便利」「あると暮らしが少し良くなる」といった性格の商品が多く、今回の分析では最も分類数が多いグループとなりました。景気が良くなったからといってすぐに購入されるわけではなく、様子見を経て余裕を実感した段階で、徐々に消費が動き出すタイプと言えます。

具体的に見ると、口中清涼剤やアルコールテイスト飲料、シリアル類、洗髪剤などでは、同月の相関はそれほど高くない一方、1〜3か月後の相関が徐々に高まる傾向が確認されました。好況期の消費の中でも、いわば「第二波・第三波」を担う商品群と位置づけることができます。

※ 表は左右にスクロール出来ます。

大分類名 景気×同月の売上 景気×1か月後の売上 景気×2か月後の売上 景気×3か月後の売上
口中清涼剤 0.145 0.358 0.494 0.549
アルコールテイスト飲料類 0.225 0.424 0.497 0.506
ビール 0.055 0.276 0.328 0.240
シリアル類 0.316 0.445 0.513 0.586
卵製品 0.149 0.350 0.357 0.397
畜産珍味 0.283 0.384 0.504 0.521
防虫剤 0.018 0.180 0.209 0.221
即席みそ汁・和風汁 -0.049 0.138 0.195 0.242
洗髪剤 0.180 0.272 0.371 0.360
フック類 0.123 0.260 0.313 0.292

※景気×同月の売上~景気×3か月後の売上の相関係数の上昇幅が大きい順に表示

③ 即時・不況追随型 ― 景気悪化に対して、即時に防衛的な選択へ切り替わりやすい商品 ―

このタイプは、景気が悪化した月に、同じ月のうちに売上が伸びやすい商品群です。『#5-2 景気の変化と逆方向に動くカテゴリー』と重なる分類が多く、不況局面における代表的な動きが、時間差の観点からも確認された形と言えます。

特徴的なのは反応の速さです。総菜・弁当、調理パン、生タイプ即席袋めんなど、支出をその場で調整しやすい商品を中心に、景気悪化を感じたタイミングで家計防衛的な選択が即座に行われ、その影響が同月の売上に表れています。

景気後退時の消費行動は、必ずしも段階的に表れるとは限りません。このグループが示しているのは、「まず避けられる支出」と「すぐに置き換えられる消費」が、景気の変化を最初に映し出すという点です。

※ 表は左右にスクロール出来ます。

大分類名 景気×同月の売上 景気×1か月後の売上 景気×2か月後の売上 景気×3か月後の売上
水産瓶詰 -0.497 -0.438 -0.412 -0.356
各種詰め合わせ菓子 -0.471 -0.359 -0.422 -0.301
調理パン -0.461 -0.356 -0.300 -0.177
生タイプ即席袋めん -0.436 -0.345 -0.291 -0.182
総菜・弁当 -0.411 -0.199 -0.090 0.049
食品ギフトセット・商品券 -0.375 -0.320 -0.260 -0.136
駄菓子 -0.315 -0.153 -0.043 0.013
和菓子 -0.314 -0.305 -0.285 -0.205
栄養サポートドリンク -0.301 -0.143 -0.080 -0.022
テーブルパン -0.299 -0.250 -0.255 -0.282

※景気×同月の売上の相関係数の小さい順に表示

④ 遅行・不況追随型 ― 景気悪化が続いたあとに、売上が伸びやすい商品 ―

このタイプは、景気悪化が一時的なものではなく、しばらく続くと認識されたあとに売上が伸びてくる商品群です。③の「即時・不況追随型」がその場の支出調整であるのに対し、こちらは 生活全体の設計を見直した結果として表れる消費と言えます。

特徴的なのは時間差です。同月では目立った動きが見られない一方、1〜3か月後にかけて相関が徐々に強まり、不況が長引く局面で存在感を増していきます。短期的な防衛反応ではなく、節約や効率化を前提とした消費行動が、遅れて売上に反映されている様子が読み取れます。

このグループは、不況局面における消費が「一段深い段階」に移ったことを示すものであり、即時型の防衛消費の次に現れる、“じわ効き型”の対応と位置づけることができます。

※ 表は左右にスクロール出来ます。

大分類名 景気×同月の売上 景気×1か月後の売上 景気×2か月後の売上 景気×3か月後の売上
健康茶飲料 0.025 -0.118 -0.260 -0.445
生鮮卵 -0.156 -0.307 -0.414 -0.497
食用酢・酢関連調味料 -0.010 -0.073 -0.256 -0.331
マーガリン・ファットスプレッド -0.007 -0.135 -0.216 -0.321
食パン -0.206 -0.297 -0.412 -0.501
プロセスチーズ 0.061 -0.071 -0.199 -0.333
つくだ煮 -0.255 -0.282 -0.410 -0.460
植物性ミルク -0.219 -0.297 -0.406 -0.314
栄養補給食品類 -0.045 -0.117 -0.197 -0.221
砂糖・甘味料 0.054 -0.003 -0.136 -0.219

※景気×同月の売上~景気×3か月後の売上の相関係数の下落幅が大きい順に表示

⑤ 非感応型(景気中立型) ― 景気の変化では説明されにくい商品 ―

最後の⑤は、景気の良し悪しと売上の動きのあいだに、明確な関係がほとんど見られない商品群です。このグループは、第5章で整理した「5-3 景気にあまり左右されないカテゴリー」と近い位置づけにあり、時間差(1〜3か月後)を考慮しても、景気との結びつきが強まらない点が共通しています。

これらの商品は、習慣的に消費されるもの、必要なときに淡々と購入されるもの、あるいは嗜好やライフスタイルに強く依存するものが中心で、景気という軸で説明しないほうが自然な領域と言えます。景気が良いから増える、悪いから控えるといった判断が、そもそも購買行動の主因になっていません。

重要なのは、この⑤が「説明できなかった残り」ではなく、「この切り口では説明しないと明示された集合」である点です。景気分析から切り離すことで、気温や生活リズム、ライフステージといった別の軸で改めて捉えるべき消費領域が、はっきりと浮かび上がります。このグループは、次の分析軸を考えるうえでの出発点と位置づけることができるでしょう。

※ 表は左右にスクロール出来ます。

大分類名 景気×同月の売上 景気×1か月後の売上 景気×2か月後の売上 景気×3か月後の売上
-0.002 0.048 0.039 0.022
女性用基礎化粧品 0.008 -0.089 -0.094 -0.092
女性用メーキャップ化粧品 -0.009 -0.068 -0.088 -0.042
穀類 0.020 -0.035 -0.036 0.014
麦茶 0.027 0.072 0.012 -0.015
ペットサニタリー用品 0.028 0.064 0.037 0.030
0.032 0.039 0.012 -0.076
乾めん -0.061 0.006 0.004 -0.020
発泡酒 0.063 0.081 0.047 -0.065
豆菓子・いかり豆 -0.067 0.034 -0.040 -0.058

※景気×同月の売上の相関係数の絶対値の小さい順に表示

本章では、景気の変化に対する売上の反応は一様ではなく、好況・不況の方向性と反応の速さの違いによって、即時に動く消費、遅れて効いてくる消費、そして景気とは距離を保つ消費まで、5つのタイプに整理できることを確認しました。

同じ「食品」「日用品」であっても、どの文脈で使われているかによって、景気との距離感は大きく異なる─それを可視化できた点が、今回の分析の最大のポイントです。

7. 分析で得られた成果

今回の分析から、商品分類によって、景気の変化が売上に与える影響の受け方が大きく異なることが確認できました。景気の改善や悪化に応じて売上が動きやすい商品がある一方で、景気の変化とほとんど連動しない商品も存在します。

特に重要なのは、すべての商品について一律に「景気を考慮すべき」とは言えない点です。気温編で確認したように、商品の特性によっては景気よりも季節要因の影響が支配的である場合も多く、景気を無理に織り込むことで、かえって需要の見通しを複雑にしてしまう可能性があります。

今回の分析は、「どの商品で景気を意識すべきか」「どの商品では景気を過度に意識しなくてよいか」を整理することに主眼を置いています。この切り分けができるだけでも、需要予測における考え方はシンプルになり、商品特性に応じた、無理のない予測につなげることができます。

需要予測において重要なのは、外部要因をできるだけ多く取り入れることではなく、それぞれの商品の特性に応じて、見るべき要因を見極めることです。今回のように、POSデータと景気指標を組み合わせて分析することで、外部要因の使い分けについて、より整理された視点を持つことが可能になります。

今回の分析では日経POSデータを活用しましたが、日経POSデータの強みは、全国規模で、長期間にわたり幅広い分類の売上データを扱える点です。地域バランスを考慮した店舗群を有しているため、全国的な傾向をより精度高く捉えることができます。

データの分類ごとの比較や、外部データと組み合わせることで、分析の幅もさらに広がります。

今回のように、難しい分析手法を使わなくても、データを眺めて考えるだけで多くの気づきが得られます。身近なテーマから始めることで、データ分析の面白さも見えてきます。

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