コラム・調査レポート

2024.09.19

食品

飲めても飲めなくても、みんなで集まろう! ノン・低・微アルコールビールに注目

 近年、お酒を「飲まない人」「飲めない人」は増加傾向のようだ。「アルコール離れ」に加えコロナ禍に伴う健康志向の高まりが追い風となり、ノンアルコールの市場は近年大きく拡大した。これらの変化が実際の購買行動にも影響しているかどうか、日経POSで数値を見てみよう。
 アルコール度数0%の小分類「アルコールテイスト炭酸飲料」「ビールテイスト飲料」は直近5年間、売り上げが伸長し続けているカテゴリーだ。アイテム数もともに伸長し続けているが、特に「アルコールテイスト炭酸飲料」のアイテム数は2022年10月から急増し、12月には「ビールテイスト飲料」と同水準となった。これはメーカー各社が原材料高騰の影響で酒類を値上げしたタイミングと重なり、「アルコール離れ」がさらに加速することを見込み、顧客層の拡大を図ったことがうかがえる。
飲めても飲めなくても、みんなで集まろう! ノン・低・微アルコールビールに注目
飲めても飲めなくても、みんなで集まろう! ノン・低・微アルコールビールに注目
 「ビールテイスト飲料」は例年7、8月の暑い時期が売り上げのピークとなっているが、2024年8月も千人当り金額4,504.3円で前年比8%増と大きく伸長した。売り上げ増の立役者となっているアサヒビール「ドライゼロ」は、「缶入りビール」と合わせた商品別ランキングでも8月は7位、年間ランキングでみても2020年以降は毎年上位10位内となっている。発売から12年となり、ノンアルコールというジャンルを越え、ビールを飲みたいときの選択のひとつとなっているようだ。また、同社からは度数3.5%の低アルコールビール「アサヒスーパードライ ドライクリスタル」(「缶入り」)も発売されており、ビールらしい飲みごたえを保ちつつも、程よく酔いたいという消費者から支持されているようだ。350mlはコンビニエンスストアでは「缶入りビール」の11位、その他POSデータには上がっていないが他社からも度数3~3.5%のビールが発売され数種店頭に並んだ。2023年の酒税改正では、350ml換算でビールは70円から63.35円に減税となっており、メーカーが注力しやすい状況となった。これまでは糖質オフなど健康志向の商品などは「発泡酒」のカテゴリーだったが、今後はビールでこのような商品が増えていく可能性もある。
 近年、飲み会の様子も変わってきた感がある。健康志向やアルコールハラスメントへの厳しい目に加え、SDGSに象徴される多様性尊重の価値観が徐々に浸透し、自分の飲みたいものを遠慮なくオーダーできる雰囲気が定着してきた。キリンホールディングスは「スロードリンク」でお酒をゆっくりと楽しむことを提唱し、サントリーホールディングスも「DRINK SMART」で、業界に先駆け1986年から発信し続けている「お酒はなによりも適量です」というメッセージの認知を広げた。また、アサヒビールも「スマートドリンキング宣言」の取り組みを実施し、マーケティング活動も行っている。ダウンタウン・浜田雅功ら吉本興業のタレントが出演の動画「スマドリでええねん!」は、飲める人、飲めない人がともに宴会を楽しむ姿で現代らしいお酒への接し方を提案した。
 ノンアルコール飲料が周囲への気遣いで選ぶものから、おいしいから、料理に合うから自主的に選ぶものとなるなど、飲み会での自由さは広がっているといえそうだ。アルコールを飲む、飲まないという壁を越え、人が集うことへの純粋な喜びを各社の商品がどのように演出していくのか今後も注視していきたい。

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