コラム・調査レポート

2024.08.1

食品

夏は焼き肉。好みのタレでさらに美味しく

 日経POSの全スーパーで大分類「和風調味料・ソース」の月次データをさらに小分類に分けてみると、「焼き肉のたれ」と「ぽん酢しょうゆ」が入れ替わりで売り上げのピークとなっていることがわかる。家庭料理では焼き肉の季節は春から夏が中心、祝日や休暇が多いタイミングとも重なっているようだ。「焼き肉のたれ」はゴールデンウィークがある5月に一度ピークとなり、多くの人が夏休みをとる7月、8月に再びピークを迎えハイシーズンを終える。6月に一時的に売り上げが下がるのは、祝日のない月は食卓に上る機会が減るためと思われる。9月以降は「ぽん酢しょうゆ」と入れ替わり、鍋シーズンへと移り変わっていく様子が見てとれる。
夏は焼き肉。好みのタレでさらに美味しく
夏は焼き肉。好みのタレでさらに美味しく
 焼き肉のたれの商品別ランキングをみると2024年6月の1位はエバラ食品「黄金の味 中辛」、2位も同社「黄金の味 甘口」であった。これらは直近5年間、順位を上位で保ち続けている「焼き肉のたれ」の定番だ。しかし「地域比較」でエリアごとに見ると、上位に全国ランキングにはない商品が散見され、地域性があることがわかる。
 「北海道」の1位、ベル食品「成吉思汗たれ」は、1956年の発売以来道民に長く愛され、ジンギスカンが北海道のソウルフードになることに貢献してきた。「東北」で2位の上北農産加工「スタミナ源たれ」は1965年発売の、こちらもロングセラーだ。青森県産のりんごやにんにくを使ったしょうゆベースのたれで、焼き肉だけでなく、野菜炒めや、肉料理の下味にも使える。特に青森県の家庭には欠かせない商品である。「九州」で3位の戸村フーズ「戸村本店の焼肉のたれ」は、宮崎県の精肉店から生まれたご当地タレだ。通信販売でも人気で、近年は西日本を中心に他エリアへと販路を広げつつある。

 さらに地域ごとの「焼き肉のたれ」の売り上げを見てみると、「東北」が最も大きいことがわかる。東北の人たちは焼き肉がとても好き、ということだろうか。
夏は焼き肉。好みのタレでさらに美味しく
 しかし千人当りの焼き肉店(事業所)数をみてみると、東北は10エリア中8番目と低く、都道府県単位のランキングでも岩手県の26位が最高位と、他のエリアに比べ焼き肉が人気というわけではなさそうである。推察にはなるが、店舗が少ないがゆえに家庭で食べる機会が多くなっていることが「焼き肉のたれ」の売り上げナンバーワンの理由のひとつではないだろうか。一方で「中京」「北陸」には逆の現象が起こっており、千人当り店舗数は北海道に次ぎ2位、3位と多く、「焼き肉のたれ」の売り上げは10エリア中9位、8位と少ない。この地域ではお店で食べる機会が多い可能性がある。
夏は焼き肉。好みのタレでさらに美味しく
 「焼き肉のたれ」の売り上げ最下位は「首都圏」だが、これは都市部が多いことによる住宅事情が影響していそうだ。

 焼き肉は決して涼しくなる料理ではないが、暑い夏に元気を与える存在のようだ。また地域ごとに家庭や、お店など楽しむ場所も様々で、ご当地タレのほかに、関西ではぽん酢がタレとして定番など食べ方もいろいろ。これから夏本番、今年の焼き肉はいつもと違った食べ方を楽しんでみるのも面白いかもしれない。

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