コラム・調査レポート

2025.12.12

食品

麻婆から担々、そしてマーラーへ

 寒さが深まり、夏に続いて辛い物が恋しくなる季節が戻ってきた。最近は麻辣湯(マーラータン)や麻辣香鍋(マーラーシャングオ)を看板に掲げる店が街中で増え、スーパーでも「麻辣」という文字をよく見かけるようになった。唐辛子の辣(ラー)と花椒の麻(マー)がもたらす、舌がしびれるような感覚とさわやかな香りが、日本の食卓にも浸透しつつあるようだ。

 辛さの歴史を振り返ると、日本の食卓で最初に広く受け入れられたのは麻婆豆腐だろう。1971年発売の丸美屋「麻婆豆腐の素」は中華料理を家庭で手軽に味わえる存在へと押し上げ、麻(マー)こそ控えめながら辛味への親しみを育んだ。日経POSで商品の初登場日をみると2013年に「介護・病時食」、2017年には「ベビーフード」にまで麻婆豆腐味の商品が広がっていることから、その浸透ぶりがうかがえる。

 次に定着したのが担々麺だ。マーラーに練りごまのまろやかさを重ねた味が、日本では定番の担々味となっている。日経POS上に初めて登場したのは2003年8月に登場したエバラ「坦々ごま鍋の素 3倍濃縮」だ。2008年には商品ジャンルが「即席カップ入り春雨スープ」に広がり、以降、このカテゴリーで定番の味となった。

 日経POS上でマーラーという言葉が商品名として初めて確認できるのは、2004年8月大栄貿易公司「横浜大飯店 中華街の麻辣醤」だ(※ただし「蒸しパン」のマーラーカオは除く)。商品の初登場日を追うと2018年は9商品、2019年は33商品と急増しており、マーラーがひとつの独立した味覚カテゴリーとして成立しはじめたことがわかる。2022年には73商品とさらに拡大。2025年11月時点では76商品が出現し、「香辛・調合調味料」だけでなく「漬物」や「マヨネーズ」など大分類26カテゴリーに及ぶ。
麻婆から担々、そしてマーラーへ
 千人当たり金額の推移をみると、2022年よりアイテム数は少ない物の2025年に売上げが急成長している。とくに麻辣湯の人気が顕著で、2025年に入ってから関連商品が17件も増加している。
麻婆から担々、そしてマーラーへ
 商品ランキングの移り変わりも面白い。「マーラー(麻辣)」を商品名に含む食品の中で2022年の1位は日清食品ホールディングス「どん兵衛 シビ辛麻辣うどん」と、手軽に食べられる食品が中心だった。一方、直近1年(2024年12月〜2025年11月)は味の素「Cook Do 極 麻辣麻婆豆腐用」が1位と、家庭でひと手間かける商品に人気が移りつつあることがうかがえる。

 こうした商品ジャンルの広がりに合わせ、マーラーはピリ辛や旨辛と並び、辛さを表す語彙のひとつとして定着しつつある。次はどんな味を表現する言葉が生まれるのか、今後も注目していきたい。
麻婆から担々、そしてマーラーへ

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