コラム・調査レポート

2024.07.4

食品

食べて推し活 懐かしいあのスナックは?阪神ファンは?……【スポーツと消費】

 昨年で発売50年目を迎えたカルビー(東京都)「プロ野球チップス」(1973年の発売当時は「プロ野球スナック」)が好調だ。一定以上の世代には懐かしいこの商品の人気はまだまだ健在で、日経POSで2024年5月の小分類「ポテトチップス」のランキング(スーパー)を見てみると「プロ野球チップス 2024」は、千人当たりの金額ベースでカルビー「ポテトチップス うすしお味 ビッグバッグ 160g」に続き2位。6月も4位に食い込んだ。発売日などで単純に比較できない部分はあるが、昨年の「2023」と比較すると4月は千人当たり金額が185.6円で前年同月比2.5倍、5月も237.6 円で26.7%増、6月も24.1%増で、勢いのあるシーズンとなっている。
食べて推し活 懐かしいあのスナックは?阪神ファンは?……【スポーツと消費】
 日次データを見ると4月20日に451円で前日比42.2%増と大きく伸長しているが、前日までに日本ハム・伊藤大海選手のカードが身長の表記で話題となった影響と考えられる。コンビニエンスストア(関東)でも4月は「2023」比で48%増だった。
食べて推し活 懐かしいあのスナックは?阪神ファンは?……【スポーツと消費】
食べて推し活 懐かしいあのスナックは?阪神ファンは?……【スポーツと消費】
 この商品を地域別にみると、2024年5月にスーパーで最も売上げが大きいのは「近畿」、次いで「中京」であった。例年5月が売上げのピークとなっているが、この2エリアは時々「中国」を交えながらも、3位以内となることが多い。チームの本拠地があるエリアでも、カード収集への熱心さには差があるようだ。
食べて推し活 懐かしいあのスナックは?阪神ファンは?……【スポーツと消費】
 「近畿」は「プロ野球チップス」のみならず、あるお菓子が他エリアと比較して売上げが突出している。パイン(大阪市)の「パインアメ」は、地元企業の商品とあってか、そもそも売上げは高かったが、2023年のある時期からその差が顕著となった。
食べて推し活 懐かしいあのスナックは?阪神ファンは?……【スポーツと消費】
 売上激増の理由は関西の猛虎、阪神タイガースのようだ。きっかけは岡田監督が2023年7月22日に大阪府などで放送した『せやねん!スポーツ』で「好きな飴はパインアメ」と発言したことといわれている。日経POS EYESで「近畿」のデータ(パインアメ 袋 120g・110gの合計値)をみると、23年7月24日週は前週千人当たり金額58.0円から32%増の76.6円と伸びている。8月14日週に125.6円へとさらに跳ね上がっているが、これはマツダスタジアムで広島東洋カープに逆転勝利し、マジック「29」が点灯したタイミングの8月16日と重なる。
食べて推し活 懐かしいあのスナックは?阪神ファンは?……【スポーツと消費】
 連勝した8月21日週は162.7円とさらに伸長したが、8月28日週に128.9円に。これは27日からの3連敗と重なるタイミングで、POSのグラフからファンたちの一喜一憂が見て取れる。そして2週間後の9月11日週、千人当たり金額は307.3円と一気に跳ね上がる。9月14日、ファンが待ち望んだ「アレ」の時、18年ぶりのセ・リーグ優勝のタイミングである。その後クライマックスシリーズまでの休息期間を経て10月16日週から再び上昇。日本シリーズでの優勝を決めた11月は優勝決定後もそのまま売れ続け、最終的に前年同月比3.6倍となった。12月に入っても売上げは前年を大きく上回ったまま、ファンたちの喜びの余波は年末まで続いたようである。
 その後12月25日週を境に千人当たり金額2ケタ台の日常へと戻ったが、2024年2月の春季キャンプ開始に重なる24年2月5日週に再び3桁台となる。24年5月の千人当たり金額は177.1円で前年同月比132.4%増と好調で、2023年シーズンの「勝ったから買う」ものから、「勝利への願掛け」「縁起物」へと変化していることがうかがえる。
 オールスターゲーム、優勝争いが本格化する後半戦が近づく中、「プロ野球チップス」「パインアメ」の売上げ、新たな応援買い商品の登場などに注視しつつ、各球団の熱い戦いを応援していきたい。

 スポーツをきっかけに食品の売上げが変化するケースは野球だけではない。例えば東京五輪・パラリンピックの選手村の食堂で世界中のアスリートに人気となった味の素冷凍食品の「ギョーザ」はまだ記憶に新しい。SNSを通じて選手たちが美味しそうに食べる姿が拡散され、2021年8月の千人当たり金額は前年同月比8.2%増となった。
 7月26日からパリで行われる五輪・パラリンピックでは「温室効果ガス量の半減」を目標に掲げ、観客・ボランティア・選手に提供する食事のベジタリアン向けメニューを増やす計画のようだ。それ以外にも美食の都パリ、そしてフランスの食へ注目が集まるだろう。4年に1度のスポーツの祭典が消費者の食にどのような変化をもたらすか、選手たちの活躍とともに注視していきたい。

サービスに関するお問い合わせ、
御見積りやデモ、
資料請求ご希望の方はこちら