コラム・調査レポート

2021.08.27

食品

激戦の麦茶市場、伊藤園vsコカ・コーラ

 麦茶市場が大きく動いている。「麦茶飲料」カテゴリーの千人当たり金額は、今年に入り7カ月連続で前年同月を上回り拡大を続けている。無糖でノンカフェインの健康的な飲み物として、またミネラルも補給できることから熱中症対策としても選ばれることが多くなっている。
 食品・飲料全体に目を移してみても、7月の「麦茶飲料」全体の売り上げは前年同月比72.3%と、日経POS情報の200大分類の中で伸び率第1位となり注目の市場に育っている。
 この成長市場に目を付けたのが日本コカ・コーラだ。今年4月、1993年以来18年ぶりとなる麦茶の新ブランド「やかんの麦茶フロム一(はじめ)」を投入した。
 「麦茶飲料」は伊藤園が長年シェア70%台を維持する牙城だ。「健康ミネラルむぎ茶」がトップを独占している。しかし4月のコカ・コーラ新製品のスタートダッシュは目覚ましく、7月にはメーカーシェアを27.8%まで伸ばし、対して伊藤園は58.5%まで落とした。7月の売り上げランキングはトップ10のうち6商品が伊藤園「健康ミネラルむぎ茶」、4商品が日本コカ・コーラ「やかんの麦茶一」と激戦となっている。
激戦の麦茶市場、伊藤園vsコカ・コーラ
 なぜここまで「やかんの麦茶一」が躍進したのか? 販促・マーケティングの力や、小売りとの交渉力の強さもさることながら、これだけの成長市場において目立ったブランドが「健康ミネラルむぎ茶」とほぼ一択であった状況もあるだろう。麦茶を飲む機会や頻度が増える中、消費者が選択の幅を求めていたことも一因ではないか。
 猛追する「やかんの麦茶一」だが、直近4週間のメーカーシェアは大きく伸びず26.0%と30%を突破できずにいる。対する伊藤園は60.5%と辛くも60%台を回復した。また代表的な650MLの最新週の平均価格を比較すると、「健康ミネラルむぎ茶」73.7円、「やかんの麦茶一」67.8円と5円の開きがあり老舗の強さもうかがえる。
 夏場の飲み物というイメージが強い麦茶だが、今後は運動時の水分補給や、冬場にもミネラル補給できる健康飲料として、両社ともに秋冬シーズンにも訴求していくという。よきライバルの出現は市場の成長にも寄与する。気温が下がってからの市場の展開も注目だ。

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