コラム・調査レポート
2024.05.30
家庭用品
暑くなり売れたのは……【POSデータにも表れる気候の変化】
2024年3月は繰り返す寒の戻りで例年より気温も低く長い冬となったが、一転して4月は東北、北海道の桜開花が早まるほど気温が上昇した。この春の急にやって来た陽気は、人間はもちろん、虫たちの活動を促したようだ。
日経POS EYES の「ドラッグストア」で大分類「殺虫剤・殺鼠剤」を見てみると、3月の気温は前年より-3.3℃、千人当り金額は7,430.7円で前年同月比11%減、4月は+1.3℃となり22,783.6円で前年同月比21%増となった。全国の平均気温の変化と連動した動きとなっている。
4月の数値を小分類別に見てみると、千人当たり金額では「害虫忌避剤」(吊り下げるタイプなど)が7,648.0円で1位(前年同月比18%増)。「アリその他不快害虫用殺虫剤」(1プッシュで駆除効果が長期に続くタイプなど)が4,039.9円で41%増と続く。この2カテゴリーは順位を入れ替えつつ上位をキープし続けている。また3位の「ゴキブリ誘因殺虫剤」(設置型の駆除剤など)は2,585.7円で9%増となっており、害虫のシーズン始まりは置くだけで長期に効果のある予防型の商品から売れていくようだ。明治時代から定番であり続けている「蚊取り線香・線香皿」は4月に10位以下だったが、昨年のデータを見ると6月から10位以内へとランクアップしている。キャンプブームによる追い風もあってか、近年も堅調を維持。豚や富士山をかたどったホルダーなどがアウトドアブランドから発売されるなど、消費者は伝統的な害虫対策をおしゃれに楽しんでいるようだ。
同じカテゴリーを「全スーパー」で見てみると、売上規模は小さいながらも概ね同じ傾向となっているが、「ハエ・蚊用殺虫剤」(スプレータイプの駆除剤など)が、昨年のデータを見ると8月から「害虫忌避剤」と入れ替わり10月まで1位となっている。予防用の商品は早めにドラッグストアで準備し、目の前の害虫にはスーパーで購入し対処するなど、商品の役割ごとに購入場所を変えていることが見て取れる。
虫つながりでいうと、大分類の「防虫剤」(衣料用)もこの春は気温の影響を受けたようだ。例年は衣替えの時期である4月に向けて売上がピークとなるカテゴリーだが、今年は3月の立ち上がりが遅れた。千人当り金額(ドラッグストア)が前年同月比19%減、4月は10%増となっている。次の衣替えは10月だが、こちらも気温による影響が予想される。
気象庁によると昨年春から続いたエルニーニョ現象が終息、夏の間にラニーニャ現象が生じる可能性が高く、日本では昨年並みの猛暑が予想されている。気温の変化と共に、消費者の害虫対策にどのような変化がみられるか、今後も注視していきたい。
(※「ドラッグストア」のデータは有償です)