コラム・調査レポート

2019.07.22

食品

寒くても売れる「ガリガリ君リッチ チョコミント」のマーケティング

 7月も後半に入ったが気温の上がらない日が続き、頭を悩ます業界も多いだろう。
 アイスクリーム業界もその一つで、日経POSデータで全国のスーパーの売り上げをみると、最高気温と呼応するように6月24日~7月14日まで3週連続で「レギュラーアイス」「プレミアムアイス」ともにカテゴリ全体の千人当たり金額の前年比二桁割れが続く。特に「レギュラーアイス」は深刻で直近7月8日週は前年同週比-34.7%と大きく落ち込んだ。
 そんな中、5月発売の赤城乳業「ガリガリ君リッチ チョコミント」が力強く推移している。昨夏の好評を受け、今年5月14日に発売を再開したアイテムで、ミント味のアイスキャンディーの中に、チョコチップ入りのミントかき氷が入っている。ソーダなど定番品が70円(税別)なのに対し、2倍の140円(税別)の値付けだが、「おまたせしました」「復活!」と力強くうたうコピーさながら売り上げも順調だ。
 主戦場のコンビニ(関東)の売り上げを見ると、6月は「バータイプアイス」内で9位の千人当たり金額48.3円、前年比76.9%と2倍に迫る勢いだ。直近週7月8日週で見ても9位を維持しているが、順位以上に注目すべきは前年比で、上位8商品の売り上げがいずれも2桁の前年割れの中、「ガリガリ君リッチ チョコミント」は前年増で推移している。
 力強さの理由は何か?
 ひとつは昨今の「チョコミント」フレーバーの人気だ。日経POS情報・POSEYESで商品名に「チョコミント」とつく商品を検索すると、昨年6月全国のスーパーで売り上げのあった「チョコミント」商品は24種だったが、今年6月は67種まで伸びている。売り上げはそれ以上の勢いで、「チョコミント」商品の合計売上は2017年10月以降、21カ月連続で前年2~3桁増の勢いだ。特に若い女性の間で人気といい、アイス、チョコレート、ケーキから豆乳などカテゴリの幅も広がっている。
寒くても売れる「ガリガリ君リッチ チョコミント」のマーケティング
グラフ:「チョコミント」商品(合計)の推移
 もうひとつは赤城乳業のマーケティングの妙だ。実はチョコミントフレーバーは関西ではあまり人気がない。そこで同社は3月30日グランフロント大阪(大阪市)で本当に関西の人はチョコミントが好きなのか、嫌いなのかを検証する「チョコミントアイス カップ」のサンプリングを実施した。サンプリング会場を選挙風に仕立て、食後のスプーンで好き・嫌いのゴミ箱型投票箱へ投票、当日は「出口調査tweet」として進捗状況を公式ツイッターで実況した。結果は好き86%、嫌い14%と好きが大勝利となった。結果もさることながら、これを機に「チョコミントアイス カップ」は近畿地方のスーパーで3月まで3.8円だった千人当たり金額が6月には22.4円に、取り扱い店舗を示すカバー率は11.3%から32.4%に拡大した。そして満を持しての5月14日「ガリガリ君リッチ チョコミント」再開を迎えている。
 食の世界の地域差は根強い。赤城乳業らしい面白さを加えることで不人気の関西でも押しつけがましくなく楽しみながら試食してもらい支持層を広げていく。人口減少の日本では、支持の高い地域を少しずつ地道に広げていくのもマーケティングの力の発揮のしどころだろう。

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