コラム・調査レポート

2025.07.4

食品消費財

「夏、長すぎ!」早々の猛暑に戸惑う消費者の選択

 急に真夏がやってきた。各地で平年より遅れて梅雨入りしたかと思えば、西日本では「かなり早い」梅雨明けを迎える異例の展開となった。
「夏、長すぎ!」早々の猛暑に戸惑う消費者の選択
 関東甲信では6月10日ごろに梅雨入りしたものの、16日からは最高気温30℃超えの日が東京では8日間も続いた。梅雨はこれで終わってしまうのか。
 日経POSデータを見てみると、35℃超えの地点が多かった6月22日ごろをピークとするグラフの急上昇が目を引く。アイスを食べて涼をとり、「錠菓」「スポーツ飲料」などを駆使し、消費者が突如として強いられた熱中症対策の様子が浮かび上がる。
「夏、長すぎ!」早々の猛暑に戸惑う消費者の選択
 昨年の6月と千人当たり金額を比較すると、「錠菓」(塩分タブレットを含む)は前年比61%増、「汗拭きシート」が前年比54%増と大幅に伸長していた。その他カテゴリーも含め長期トレンドでみると、値上げの影響もありつつも全般に年々夏期のピークが高くなる傾向にあるようだ。
「夏、長すぎ!」早々の猛暑に戸惑う消費者の選択
■暑さに適正に対処し体調管理:「ペットボトル入りスポーツ飲料」「錠菓」

 電解質を適量含む水分や錠菓(塩分タブレット)を摂取し熱中症を予防する方法は、いまやすっかり定着した。厚生労働省は2025年6月1日から職場での熱中症対策を義務化し、厳しさを増す夏への備えは社会全体で高まっている。
 6月16日週の「ペットボトル入りスポーツ飲料」の商品別ランキングでは、1位にコカ・コーラ「アクエリアス」、続いて大塚製薬「ポカリスエット」、サントリー「グリーンダカラ」が並ぶ。直近3年間のPOSデータを振り返ると、風邪が流行し始める10月以降には1位が「ポカリスエット」に入れ替わる傾向がある。「アクエリアス」はクエン酸やアミノ酸を配合し、マグネシウム量も比較的多く、炭水化物はやや控えめ。運動時を意識した設計とさっぱりした味が、夏期により支持される理由と言えるだろう。地域別にみると、東北のみ「グリーンダカラ」が1位となっている。日本有数の自転車イベント「ツール・ド・東北」で長年オフィシャルドリンクとして採用されており、地域との結びつきが強いブランドのようだ。
「夏、長すぎ!」早々の猛暑に戸惑う消費者の選択
 同週の小分類「錠菓」では、上位10商品のうち6商品が塩分タブレットであった。カバヤ「塩分チャージタブレッツ」シリーズが上位3位を独占しているが、ほかにも、森永「インタブレット 塩分プラス」、菓楽「ライフガードタブレット 塩分プラス」、アサヒグループ食品「三ツ矢塩タブレット」など、栄養補給食品や清涼飲料とのコラボ商品が目立つ。

■とにかく身体を冷やしたい:「ホームタイプマルチアイス」「汗拭きシート」

 酷暑の外出時、冷たいアイスを思い浮かべる人は多いだろう。6月16日週の「ホームタイプマルチアイス」では、気温がまだ低かった6月9日週と比較して氷菓が上位へとランクアップしていた。
「夏、長すぎ!」早々の猛暑に戸惑う消費者の選択
 また消費者たちは暑さ対策として、ひんやりとしたシートで身体を拭く「汗拭きシート」も選んだようだ。6月16日週の商品別ランキングでは、「冷」や「アイス」といった“冷感”を強調する名称の商品が上位を占める。9位に新たにランクインしたのは、花王「ビオレ 冷タオル 無香性(5枚)」。発汗量の増加に対し、消費者が実用的な対策を講じていたことが読み取れる。
「夏、長すぎ!」早々の猛暑に戸惑う消費者の選択
■暑い日は火を使いたくない?:「弁当」「レトルトカレー」

 6月16日週、「弁当」の売り上げも麺類中心に伸びた。商品別ランキングをみると冷麺や日本そばなどの麺類が多く、前週の4商品から6商品へと増えていた。一方、「レトルトカレー」全体の売り上げは変化がなかったものの、タイカレーに限ってみると、気温上昇とともに売り上げが伸びていた。日本の夏は、暑い国の料理を選ぶほどに暑くなっているようだ。
「夏、長すぎ!」早々の猛暑に戸惑う消費者の選択
 暑さに慣れることはなくても、向き合う知恵は年々積み重なっている。消費者が今年の夏をどう乗り越えていくのか、今後も注目していきたい。
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