コラム・調査レポート
2025.06.5
食品
日経POSでみる コメ小売り最前線2023~25(前編)
「令和のコメ騒動」は2024年末には品薄感こそ解消されたものの、価格の高騰が急速に進み物価高に苦しむ消費者に経済的にも心理的にも追い打ちをかけ続けている。2025年3月以降、備蓄米放出、農相の交代、首相による随意契約の指示、小泉農相が急速に進める「官製値下げ」など、コメの安定供給をめぐり激動の上半期となった。
今回は「コメ対策」をめぐる消費者の動きを、2回にわたり日経POSのデータで追う。前編では販売数量や商品種別、地域による違いにフォーカスする。
今回は「コメ対策」をめぐる消費者の動きを、2回にわたり日経POSのデータで追う。前編では販売数量や商品種別、地域による違いにフォーカスする。
■直近の状況
2025年5月の数値をみてみよう。
千人当り金額 61,848円(前年の92%増)
千人当り個数 17.36個(前年の2%増)
平均価格 3,563円(前年の88%増)
■直近3年間の動き
2025年5月の数値をみてみよう。
千人当り金額 61,848円(前年の92%増)
千人当り個数 17.36個(前年の2%増)
平均価格 3,563円(前年の88%増)
■直近3年間の動き

2024年初頭から予測されていたコメの需給ひっ迫は、8月初旬の相次ぐ自然災害の影響もあり、現実味を帯び始めた。2024年9月以降、月を追うごとに価格は上昇を続け、平均価格は2025年5月が3,563円と2024年5月の2倍近くとなった。店頭に並ぶ品目数は減少傾向にあり、千人当り個数も2024年9月以降、2025年3月まで前年比減となっていたが、4月に入り10%増と前年比増に転じ5月も2%増となった。
■商品・ブランド別の比較
■商品・ブランド別の比較

2023年と2025年の5月の商品別ランキングを比較すると、2023年は上位10商品すべてがブランド米だったのに対し、2025年は3商品のみにとどまっている。また、2023年に2商品あった10kg入り商品は2025年にはゼロとなった。

ブランド別では、「こしひかり」「ゆめぴりか」がそれぞれ1商品ずつランクインしたのみで、売れ筋ブランドの存在感が大きく後退。「こしいぶき」は2024年5月のランキングでは最高で135位の品種だったが、3位へと急浮上している。
■エリアごとの差異
■エリアごとの差異

千人当り個数は、東北、北陸、関東外郭、首都圏、中国で大幅に増加している。特に北陸は前年比35%増、関東外郭は26%増と顕著な増加を示した。千人当り個数は2024年9月以降、多くのエリアで前年比割れが続いていたが、2025年2月以降、前年比増のエリアが増加しはじめ、4月の全国平均10%増へとつながった。

価格はそもそもエリアによって高低があるが、値上げ幅は首都圏、近畿、九州で90%以上と特に大きい。

首都圏と、米どころを多く抱える東北の商品別ランキングを比較した。首都圏ではブレンド米等が7商品のところ、東北は1商品のみとなっている。また東北のブランド米の産地はすべて東北となっている。

上位10位中のブレンド米は、首都圏、近畿の大都市圏で7商品と比率が高い。いずれも平均価格の前年比が90%増を超え、そもそも地元で生産された商品が少ない地域となっている。ご当地のブランド米が上位に残るコメ産地との差は明確だ。
後編では、日次データなどで平均価格の変動に注目し「官製値下げ」の影響について、データを見ていきたい。
後編では、日次データなどで平均価格の変動に注目し「官製値下げ」の影響について、データを見ていきたい。
