コラム・調査レポート

2024.10.17

家庭用品

たばこ市場が歴史的転換点に~「加熱式」が「たばこ」上回る

 2024年9月、「加熱式たばこ」の売り上げが「たばこ」を超えるときが来た。日経POSでコンビニエンスストアの数値(関東)をみてみると、千人当り金額が「たばこ」は74,951円、「加熱式たばこ」はそれを3%ほど上回り77,157円であった。また双方を合わせた上位10商品をみると「加熱式たばこ」は2019年10月に5商品あったが、2024年9月は9商品となった。「加熱式たばこ」の販売開始から10年余りでメインカテゴリーが入れ替ることとなった。
たばこ市場が歴史的転換点に~「加熱式」が「たばこ」上回る
 「加熱式たばこ」は従来の紙巻きたばこと異なりたばこ葉を燃焼させないため、灰や煙が出ず匂いも比較的少ない。周囲の人や環境、自身への気配りをしつつ、喫煙を続けられるというメリットが支持され今日まで売り上げを伸ばし続けた。
 たばこ全体(「たばこ」「加熱式たばこ」)の年間売上げは、2020年は千人当り金額152,472円、2023年9月~24年8月は150,202円で1%減、千人当り個数は11%減となっており市場の縮小が徐々に進んでいることがわかる。また「加熱式たばこ」も右肩上がりの売り上げ増から、2023年以降は鈍化している。喫煙可能な飲食店、場所が減ったことに加え、2018年から5年連続で行われた値上げが、愛煙家たちにもさすがに影響してきているようだ。

 厚生労働省「国民健康・栄養調査」によると、2022年の喫煙率は15%で、2012年調査の21%から徐々に下がり6ポイントほど減少している。たばこを取り巻く厳しい状況を反映してか、フレーバーオイルを吸引するタイプの商品などを含む「禁煙・節煙用品」からは、禁煙を試みる様子がみてとれる。
たばこ市場が歴史的転換点に~「加熱式」が「たばこ」上回る
 販売個数を直近5年でみると、新型コロナ対応で緊急事態宣言が出された2020年4月に前月比31 %増と最初のピークが現れる。同居者への気遣い、また感染・重症化リスクが増加するとの情報が影響し、禁煙を試みた人が増えたことがうかがえる。しかし同じタイミングで「たばこ」「加熱式たばこ」の売り上げも上がっており、生活の状況や情報の解釈により喫煙者の中でも行動が分かれたようだ。
 続いて各社が一斉に値上げを行った2021年10月、2022年10月に各年のピークがきている。たばこ自体は駆け込み需要により9月に売り上げを大きく伸ばしているが、一方で値上げを禁煙の好機として利用した喫煙者もいたようだ。とくに2022年10月は100%プーアル茶で作られた禁煙サポート商品「iPPUKU RELAX 」により、前月の2倍近くの売り上げとなっている。火をつけるタイプのため「たばこ」を吸っている感覚があるため、「禁煙・節煙用品」の中でも違和感がなく続けやすいようだ。またメンソールやブルーベリーフレーバーの登場で、売り上げ規模が小さいこのカテゴリーを支える存在となっている。
 たばこを取り巻く状況は今後ますます厳しくなることが予想される。しかし「加熱式たばこ」の台頭や「禁煙・節煙用品」の売上増には、喫煙者がこの状況をそれぞれの考えで乗り越えようとしている姿が見てとれる。このカテゴリーの今後の動向に引き続き注視して行きたい。
たばこ市場が歴史的転換点に~「加熱式」が「たばこ」上回る

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