コラム・調査レポート

2019.05.29

食品

「寒天」ブームに学ぶ、データが示唆する成功事例

寒天に何度目かのブームが到来している。2月に始まったこのブームは多少の浮き沈みがありながらも5月末現在いまだ健在だ。
きっかけは2月9日放送のテレビ番組だ。TBS系『ジョブチューン』で「病気を予防する食べ物スペシャル」として取り上げられ一気に売り上げが伸びた。
2月の「寒天」カテゴリの千人当たり金額は前年同月比164.4%増の284.0円。その後3月にいったん下がるも同45.2%増の153.9円を維持。4月に同じくTBS系「名医のTHE太鼓判!」で取り上げられ再び上昇気流に乗り、同170%増の297.5円と2月を上回る売り上げとなった。5月の推定は千人当たり金額180円程度となる見込みでいまだ上振れで推移していることがわかる。
「寒天」カテゴリで40%前後の圧倒的なシェアを誇るのが伊那食品工業(本社:長野県伊那市)だ。「寒天」のトップ3はすべて同社の「スープ用糸寒天」の容量違いで占められている。
「スープ用糸寒天」は「寒天由来の食物繊維のはたらきでおなかの調子を整えお通じを改善する」という機能性表示食品で、みそ汁やスープなど温かい汁物に入れるだけで食べられる手軽さも特徴だ。
「寒天」ブームに学ぶ、データが示唆する成功事例
グラフが示す通り、実は「寒天」は2017年6月にもブームとなった。これも今年同様『ジョブチューン』の番組がきっかけとなったが、売り上げが伸びたのは放送のあった6月のみで翌月には収束している。今回のように継続的に話題になることが売り上げの底上げを定着させるのに効いていることがわかる。
さらに「スープ用糸寒天」を商品ごとに見ると、2017年6月の売り上げを超えたのは100gのみで、30gと15gは当時を抜けずにいる。100gの人気は裏返すと消費者が大容量に移行しているためとも言えるだろう。「スープ用糸寒天100g」は4月の平均単価が1045.9円と、スーパーの中では高額商品の部類に入る。何度目かのブームの中でためらわずに大容量の高額品を買うようなリピーターが増えつつあることを示唆していると言えそうだ。
継続的な情報発信による売り上げ増、商品の定着化、それがもたらすリピーターの増加はひとつの理想形だろう。自社のみの努力の範囲を超える部分があるが、データが示唆する成功事例として学ぶことは多い。

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